AIが「眼球」から性別を見抜く

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2021年、英科学誌 Scientific Reports に衝撃の論文が掲載されました。AIが、たった1枚の眼底写真(網膜の血管写真)から、86.5%の精度で性別を当ててしまうというのです。医師が肉眼では見分けられない微細な違いを、AIは瞬時に検知。2025年現在も、この「ブラックボックス」能力は医療界をざわつかせています。

8万4千枚のデータで訓練

英国バイオバンクの84,000枚以上の眼底写真を使い、深層学習モデルを訓練。内部検証では86.5%、外部データでも78.6%の精度を達成。2023年のカナダ・バンクーバー研究では、AIが注目する領域を可視化(XAI)すると、男性の網膜は「視神経乳頭周囲が暗く、上側頭部に血管の数・分岐・結節が多い」ことが判明しました。

驚異の実証

この可視化結果をもとに、訓練を受けていない一般人に「男性らしい網膜の特徴」を10分だけ教えたところ、なんと66%の正答率を達成。AIが発見した「見えないルール」が、実は人間にも学べることが証明されました。

医師の困惑

しかし、なぜ男性と女性の網膜に違いがあるのか――医師たちは答えられません。ホルモン?遺伝子?血流パターン?仮説は出るものの、決定的な証拠はなし。2025年のマレーシア研究では96.83%の精度を記録しましたが、「AIは知っているが、人間は理解できない」というギャップが拡大しています。

応用の可能性

この技術は、性別による疾患リスクの早期発見に応用可能。例えば、男性に多い心血管疾患や、女性に多い自己免疫疾患の兆候を、眼底から予測できるかもしれません。AIが「性別マーカー」として網膜を使う日が、近づいているのです。

倫理と課題

一方で、**「AIが正しくても、理由がわからない」**ことは倫理的リスク。誤診の原因究明が難しく、プライバシー(性別推定=個人情報)問題も。説明可能なAI(XAI)の進化が、今後の鍵を握ります。

結論

人間の目では捉えられない「性別の痕跡」を、AIが網膜から暴き出す――これは、AIが単なるツールではなく、新たな生物学的発見の触媒となっている証拠です。医師が「わからない」と言うその先に、未来の医療が待っているのかもしれません。

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